『キル・ビルvol.1』(クエンティン・タランティーノ監督/2003年/アメリカ)

いやあつまらないつまらない。ギャグならギャグで一向に構わないのだが、それにしてはプロットが時にシビアで、バランスが著しく崩れている。見せる技術は普通にある。アクションシーンも退屈はしない。おもしろいシーンの連続だ。しかし、驚きが一切ない。かつて見たものを小手先で繰り返しているだけ。「おもしろいでしょ?」「おもしろいでしょ?」としつこく繰り返されても食傷するだけだ。

『SAW』(ジェームズ・ワン監督/2004年/アメリカ)

序盤は謎解きゲームのような展開で期待させたが、登場人物が次々と増え、舞台があっちへこっちへ飛んでいくあたりからドタバタした印象に。最終的につまらないのは、犯人にこれだけのことをする動機が希薄だからだろう。続編があるらしいが、たぶん見ない。

『エコール』(ルシール・アザリロヴィック監督/2006年/ベルギー・フランス)

なんじゃこれ。設定は謎めいているし、解決されない謎も多いが、最後にはどうでもよくなってくる。解決しなければいけない謎ではないからだ。ロリコン映画? とは言え、少女たちの姿(むしろ幼女のほうが多い印象だが)を、予告編や紹介文で見るほど美しく描いているわけではない。日の光差す森で遊んでいても、薄っぺらな服で体操していても、なにか即物的で、ちっとも楽しそうではないし、心ときめかすような空気が醸しだされているわけでもない。これで楽しめる者がロリコンで、楽しめないのが非ロリコンなのか? 

『ダークスター』(ジョー・カーペンター監督/1974年/アメリカ)

SFXにしろ、宇宙船内部の生活にしろ、非常に貧乏ったらしい映画で、大いに笑わせてくれる。エレベーターからの脱出シーンがいやに盛りあがるとか、登場する異星人があまりにもチープだとか、いろんな意味でバランスが崩れた作品だが、サービス過剰気味の昨今の娯楽映画に比べるとむしろ好印象。想像力の入りこめる余地のある作品のほうがやっぱり楽しい。ディズニーの『ブラックホール』とか、ロシアの『放浪物語〜テイル・オブ・ワンダー』「不思議惑星キン・ザ・ザ」とか。

『ファンタスティック・フォー』(ティム・ストーリー監督/2005年/アメリカ)

原作のコミックは知らないが、ご都合主義的なアホらしいアイディアが楽しい。ただ、元の姿に戻るための研究に入る時点からストーリーは停滞気味。アメコミの映画化は盛んだが『サンドマン』はどうなんだ? ストーリーはクォリティが高いが、絵には今ひとつ魅力が乏しい観があるから、それはたとえばロシア映画『ナイトウォッチ』ばりのなまめかしい演出で実写化すれば、相当いいところまで行くのではないかという気が。映画化されれば中断している翻訳も再開してくれるかもしれないし。

『キス・オブ・ドラゴン』(クリス・ナオン監督/2001年/フランス・アメリカ)

派手な銃撃、暴力シーン、ジェット・リージャッキー・チェンばりのカンフー・アクションがあるにもかかわらず、主人公の寡黙さ、内容の暗さがあって妙に地味な印象。ヤク漬けにされたアメリカ人娼婦と、人質にされていた娘の再会によって、めでたしめでたしで全編は完結するが、この母子に明るい将来は示されていないし、主人公の中国人警官とのロマンスがほのめかされているわけでもない。どういう意図の下に製作された映画なのか? 主人公が負けてしまっては成立しない構造なので、いかにアクションが激しくてもスリリングさは皆無。そもそもジェット・リーリー・リンチェイは負けたことがあったろうか? いつでも正義の側にいて、優等生すぎてつまらない。一度徹底的に負けてもらいたい気がする。