2004-01-01から1年間の記事一覧

ポル・ポト伝

デービッド・P・チャンドラー『ポル・ポト伝』(めこん 1994年)。ポル・ポトの伝記というのは少なくともわたしの知る限り日本ではこれ一冊しか出ていない。ハードカバーの本文で300ページ弱。50ページにもわたる原注を見ても、著者が当時としては(原書は19…

TOKYO FILMeX

第5回東京フィルメックスの最終日。 ボーディ・ガーボル『ドッグス・ナイト・ソング』。ああこの監督は本当になにを考えてるんだろう? 『ナルシスとプシュケ』ではきわめて真っ当な歴史ロマンをとれる素養があること(実際はそうなってはいないんだが)、そ…

TOKYO FILMeX

マルズィエ・メシュキニ『STRAY DOGS』。いい。子供が出てきて、アフガニスタンが舞台で、そろそろ「またか」といった観がなくもないが、秀作。主役である兄妹のうち、妹の強情な表情が異様に印象に残っている。強い。こんな表情があるかぎり、希望というの…

「珈琲時光」「父、帰る」

吉祥寺バウスシアターにて『珈琲時光』(侯孝賢)。 『往年童時』『恋恋風塵』などの諸作で、小津安二郎と比べられた、台湾の侯孝賢が、小津安二郎生誕100年を記念して、現代の東京を舞台に撮った作品―なのか? 「現代」を舞台にしているというよりも若干…

風の王国

五木寛之『風の王国』(新潮文庫)。「サンカ」について書かれた小説だというので読んでみた。力作。作者はあとがきで「この小説は、作者の見聞と想像にもとづく創作であり、実際のいかなる団体や人物とも関係がありません」と書いていて、いわゆる「サンカ…

IZO

シアター・イメージ・フォーラム。三池崇史『IZO』。う〜ん? どうにかすればもっと面白くなったのでは? これほど大掛かりな仕掛けにしなくても、同じことは表現できたろう。趣向に凝ったせいで、かえって焦点がぼやけた感じ。この人の映画は初めて観たが、…

マトリックス

『マトリックス』『マトリックス リローデッド』『マトリックス レボリューションズ』。DVDで三作続けて観る。続けて観させる力はある。迫力のある映像、スリリングな展開、飽きさせない。とは言え、なにやら怪しげな結論だが。最後のほうはただの戦争映画に…

ジャクリーヌ・タイエブ

中野の中古CD屋でWORLD棚を引っ張り出して眺めていたら、見覚えのある顔が現われた。ジャクリーヌ・タイエブだ。日本盤のCD、『ロリータ・チック'68』のCD本体に使われている写真と同じものだ。 CDのタイトルは『the complete masterwaorks of The French Ma…

人生途上旅途上

『人生途上旅途上』(自然食通信社)。一人芝居をしながら全国を行脚しているという、下北は関根浜出身の役者、愚安亭遊佐のエッセイ集。同じ下北の出身なのに、この人のことは全然知らなかった。とは言え、何年か前、下北半島の付け根にある六ケ所村の原子…

デビルマン

有楽町国際フォーラム。那須博之監督「デビルマン」。試写会の招待券が当たったからとデビルマン好きの友人から誘われたので行ってみた。 ひどい。ひどすぎる映画。これほどの駄作は予想だにしていなかった。テレビの戦隊ものレベル。子供だましですらない。…

ペット

鬼才・三宅乱丈がスピリッツに連載していた長編マンガだが、スピリッツはしばらく手にしていないわたしはこんなマンガがあることを全然知らなかった。中野まんだらけにブラリ立ちよってなにげに本棚を眺めていたら、この『ペット』の1〜3巻がおいてあったの…

ゲンダーヌ

田中了+D.ゲンダーヌ『ゲンダーヌ ある北方少数民族のドラマ』(徳間書店)。苦難に満ちた、著者ゲンダーヌ氏の半生だが、あまり苦渋を感じさせないのは著者のおおらかな人柄のせいもあるだろうか(執筆はほとんど田中了氏であるらしいが)。少年時代の思い…

千年女優

今敏『千年女優』。レンタルDVDで観た。よくできている。最大の欠陥は二箇所。主人公が愛しの君を追いかけるモチベーションがあまりにも希薄であること。物語を進めていた鍵である「鍵」が結局なんの役割も果たさない、おとりみたいなものだったこと。その他…

パーフェクト・ブルー

今敏『パーフェクト・ブルー』。レンタルDVDで観た。よくできている。おもしろい話だ。無用に混乱させすぎた観はある。アニメである必然性をあまり感じない。実写にしたほうがよっぽど感銘深かっただろう。人物の表情は硬く、動きもときにぎこちない。アイド…

ワイルドバンチ 特別版

サム・ペキンパーの代表作『ワイルド・バンチ』に未公開シーンを加えたDVD。 大昔に一度観たきりだったが、今回観直してみて、記憶にあるほどおもしろくなかったな。ロートルなアウトローたちの悲哀、矜持、男気を感じるべきなのだろうが、いかに意気がって…

おれ にんげんたち

岡本武司『おれ にんげんたち(副題:デルスー・ウザラーはどこに)』(ナカニシヤ出版)。 朝日新聞社を定年まで勤めあげたのち、ハバロフスクの大学で日本語講師を勤めながらロシア語を勉強し、その後ウラジボストクの大学へ留学して、ロシア語を勉強しな…

森と湖のまつり

武田泰淳『森と湖のまつり』という小説の存在は、先般出版された皆藤健『「森と湖のまつり」をめぐって 武田泰淳とビッキらアイヌの人たち』(五月書房)という本を見かけて初めて知った。砂澤ビッキや知里真志保をモデルにした小説だという漠然とした印象だ…

竜を駆る種族

ジャック・ヴァンスの1962年作『竜を駆る種族』。再読だが、内容をすっかり忘れていた。いやあ楽しい。映画になったらさぞかし迫力満点だろうとは思うものの、ロマンスの要素に欠けるし、登場人物も共感を呼ぶようには描かれていないし、ストーリーもサービ…

大畑川の上大畑橋から

大畑川の上大畑橋から上流にむかう土手は今はアスファルトで舗装され、川の側には手すりが張られて、ずいぶんこざっぱりした印象になった。湯坂下側の土手を上流に歩いていけば、かつて高校の中ごろまで住んでいた家が今は取り壊されて更地になっている。さ…

イオセリアーニ2

渋谷シネ・アミューズ。 11:15〜『月曜日に乾杯!』。イオセリアーニの映画の顕著な特徴が「群集劇」であることにようやく気づいた。よくまとまって、テーマもわかりやすいという意味で、イオセリアーニから一本というときはやはりこれになるか。退屈な日常…

カレル・ゼマン『狂気のクロニクル』

DVDで観る。去年、劇場(シアター・イメージ・フォーラム)で観て大変気に入った作品。 「特撮の時代」の作品群の中でも、『彗星に乗って』『盗まれた飛行船』などと同様、起伏の多いストーリーに従って作られた作品。完成度は低いかも知れない。けれど、好…

安東ウメ子さん、先祖の地へ旅立つ

朝日新聞(というかWeb)では、「アイヌ民族のムックリ奏者、安東ウメ子さんが死去」と記されていた。「安東ウメ子さん(あんどう・うめこ=アイヌ民族のムックリ奏者)は15日、大腸がんで死去、71歳。通夜は16日午後7時、葬儀は17日午前10時から…

花輪和一の新刊!

花輪和一『不成仏霊童女』(ぶんか社) こんな作品があったとは知らなかった。『月刊ホラー』という、かなり読者層の限定された雑誌に不定期連載されていた表題作シリーズに、同誌および増刊に読切で載った短編をまとめたもの。 おぞましくかつ美しく、浅ま…

渋谷で映画

ユーロスペース。12:00〜。チョン・ジョウン『子猫をお願い』。すごくいい。カメラが主役の女性たちに寄り添うように前に後ろにまわるところでは、あたかも彼女たちのなかに混じって、彼女たちの一人であるかのように感じる。五人は均等にシナリオを振り分…

シェイハ・リミッティ来日公演

草月ホール。18時開演、17時半開場のところを、17時20分に会場に着いたら、すでに場内は長蛇の列。こんなに大人気とは思わなかった。チケットぴあはたしかに売切れと言われたが、アリオンでは難なく入手できた。リミッティのCDは1994年に国内盤が出たきりだ…

リミッティ来日公演

「ライの母」シェイハ・リミッティがついに明日、来日ライブ。 無事に来日できるのか? なにせ高齢、80歳だ。 日本で発売された唯一のCD『シディ・マンスール』は1994年、70歳のときだった。 オーヴァーワーク気味のサウンドにまるで負けていない、迫力ある…

あーあEURO2004が終わってしまった

ギリシャは勝負強かったけどあまりおもしろくなかったな。 チェコ対ポルトガルが見たかった。ウイニングイレブン2002でチェコ対ギリシャ、チェコ対ポルトガルをやって、圧勝して溜飲を下げた。「やさしい」レベルでだけれども。

モーニング31号

「サイコドクター楷恭介」。しかしヘタだなあ。人物の表情が仮面のようだ。 「取締役島耕作」。勉強はしてるからためにはなる。 「ブラックジャックによろしく」。精神科編はどう転がるのかいまだわからない状況だ。 「クッキングパパ」。このマンガを参考に…

マフマルバフ姉妹

銀座テアトルシネマ。9:20のモーニングショーで妹ハナ・マフマルバフの『ハナのアフガンノート』、11:15から姉サミラ・マフマルバフの『午後の五時』 ハナ・マフマルバフ『ハナのアフガンノート』。最高におもしろいドキュメンタリー。姉が『午後の五時』…

本ニ冊

伊藤正孝『アフリカ ふたつの革命』(朝日選書 1983年) 「エリトリアはエチオピアのひとつの州ですが、黒人が黒人を支配するという、アフリカでも異例の植民地主義が維持されています。エチオピアとゲリラの戦争は一九六一年に始まり、以後二十四年間つづい…