森と湖のまつり

武田泰淳森と湖のまつり』という小説の存在は、先般出版された皆藤健『「森と湖のまつり」をめぐって 武田泰淳とビッキらアイヌの人たち』(五月書房)という本を見かけて初めて知った。砂澤ビッキ知里真志保をモデルにした小説だという漠然とした印象だけで入手し(古本で)読んでみた。それにしても、こんなに分厚い小説だとは思わなかった。こんなにたくさんの人物が組んず解れつする小説だとは思わなかった。アイヌとシャモの間の確執をこんなに執拗に描いている小説だとは思わなかった。登場人物はみんな生き生きとし、(文庫本で)六百ページ弱を飽きさせない。この、ときにドストエフスキーを思わせる対立、討論小説が、しかしドストエフスキーのような圧倒的な印象を残さないとしたら、それはテーマがドストエフスキーほど深遠でないからか? 先にあげた皆藤健の本はもちろん読んでみたいし、これを原作とした映画もぜひ見てみたい。