2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

高野秀行「怪しいシンドバッド」(集英社文庫)

黒田硫黄の表紙に惹かれて本屋で手に取ってみたが、この著者、なんと『幻の怪獣ムベンベを追え』を執筆した張本人だと言うではないか。しかも、集英社文庫には既に本書も含めて六冊も収録されているではないか。通勤電車で降車するのも忘れるくらい夢中にな…

鷲津名都江『ようこそ「マザーグース」の世界へ」(NHKライブラリー)

「わらべうた」の一種としての「マザーグース」を少しでも知ろうと思って読みはじめた。「子ども部屋の押韻詩」を意味する「ナーサリー・ライム」というのが通称のようで、だったらその表現で統一してもらいたいものだ。日本ではアメリカ経由の「マザーグー…

岡田尊司「脳内汚染からの脱出」(文春新書)

「ゲーム、ネット依存」が薬物依存に等しい危険性を有しているということを脳内現象に即して説明し、自身のものを含む臨床結果と豊富な統計によって裏づけるというのが前半の展開。あまりにもスッキリしているのが逆に腑に落ちないところだ。統計が恣意的に…

ブッツァーティ「神を見た犬」(光文社古典新訳文庫)

たしかSFマガジンの書評で絶賛されていたので読んでみたのだが、どれもこれも今ひとつ詰めが足らないという印象。焦燥感を駆り立て恐怖を盛りあげるテクニックがあるというのはわかる。「七階」などはそのテクニックが遺憾なく発揮されていて、主人公が次第…

ジェニファー・トス『モグラびと ニューヨーク地下生活者たち』(集英社)

ずいぶん前に一度読んだノンフィクションを再読。この本を見るまではそんな場所があるとも知らず、そんな人たちがいるとも知らず、食い入るように読んだが、最終的に一抹の物足りなさをおぼえたのが、再読してもやっぱりそうだ。モグラびとたちの悲惨な来歴…

バーネット『秘密の花園』(光文社古典新訳文庫)

名前だけは知っていた児童文学の名作だが初めて呼んだ。かわいげのない子どもと言い、苛酷だったり冷淡だったりする環境と言い、謎めいた展開を交えて読ませる読ませる。動物と話せ、植物のことならなんでも知っているディコン少年の存在は作者の願望が勝っ…

岡田斗司夫『「世界征服」は可能か?』(ちくまプリマー新書)

サブカル系の軽く読み流せるツッコミ本かと思いきや、最初はそういう体裁だったのが、最終的には世界征服のむなしさ、うまみのなさが露呈する結論に至る。子どものころですら「世界征服」なるものになんら引かれることのなかった身としては感情的にはわかっ…

読んだ本

最近読んだ本。

「ボビー」(2006/アメリカ/エミリオ・エステヴェス)

ロバート・ケネディその人ではなく、RFKが当時かもしだしていた希望のオーラのただなかにいる人たちを描いている。やりたいことが多すぎて、全体がしっかり噛みあっていない印象があり、取って付けたようなせりふ回しがやや鼻につかないこともなかったが、最…

「あなたなら言える秘密のこと」(2005/スペイン/イサベル・コイシュ監督)

タイトルを見て、心になにかしらの傷を抱えた男女が紆余曲折するラブストーリーだろうなと思って、普通ならまず観ない映画だが、冒頭の単純な毎日を繰り返す心を閉ざした女性の描写を見て一気に引きつけられた。主人公のハンナが休暇でどこかの物寂しい町に…

映画二本

飯田橋ギンレイにて。どちらも内容は知らないで、あまり期待もしないで、へたな映画観て疲れるよりは何時間か喫茶店に座って読書でもしていたほうがいいかなあと迷った上で入館したが、いやあ、観て良かった感激した。映画っていいもんですねえ!