ブッツァーティ「神を見た犬」(光文社古典新訳文庫)

たしかSFマガジンの書評で絶賛されていたので読んでみたのだが、どれもこれも今ひとつ詰めが足らないという印象。焦燥感を駆り立て恐怖を盛りあげるテクニックがあるというのはわかる。「七階」などはそのテクニックが遺憾なく発揮されていて、主人公が次第により重病の患者が入院している下階へ移されていくのは最初からわかりきっている展開なので、「次はどう出るか」というスリルもあった。ただ、やはりオチがみんな弱い。こんなオチしか持ってないのによくもまあ小説にする気になったな、というのは言いすぎか。ラファティだったらもっとヘンテコな奇天烈な代物になったのになあ、というのは無い物ねだりか。