2006-01-01から1年間の記事一覧

竹本泉吾妻ひでお

ラファティを思わせるというSF方面からの噂を聞いて、竹本泉のマンガをいくつか読んでみた。最初に読んだ『ねこめ〜わく』『よみきりもの』がなかなか楽しく、とくに『よみきりもの』のなかには本当に声を出して大笑いした絶品があったので、もっと読んでみ…

『オランダの光』(監督:ピーター・リム・デ・クローン/2003年/オランダ映画/1時間34分)

17世紀のオランダ絵画に特徴的に「オランダの光」を探る長編ドキュメンタリー。平坦で単調な地平線、広大な鏡とも言えるエイセル湖による反射光、大気中に漂う水蒸気によるヴェールによって物の輪郭が柔らげられ、すべてが絵画的になる。気象の絶えざる変化…

オランダの光

映画館で見逃したのでDVDで鑑賞。

別役実『淋しいおさかな』(PHP文庫)

ハードカバーで一度読んだ気もするが、実際に読んでみると既読のような未読のような。う〜ん。輪郭がハッキリしておらず、意外なオチが身上であるが、驚天動地のものはない。めでたしめでたしでは終わらず、結末は常にアンチクライマックスで淋しい。別役童…

エミリー・クレイグ『死体が語る真実 9.11からバラバラ殺人まで衝撃の現場報告』(文春文庫)

アメリカの法人類学者による回顧録。死体を調べる仕事のうち、”軟組織”(皮膚、筋肉、内臓)を担当するのが「法病理学者」であり、硬い骨を担当するのが「法人類学者」なのだという。前者は医学博士で広義の医者であるのに対し、後者は文学(哲学)博士の称…

『くるみ割り人形』(中村武雄/1979/日本/94分)

制作費七億、五年の歳月、超豪華メンバーを用いて作られた残念な作品。主人公のクララを始め人形の造形、細やかな動きはすばらしい。間を長くとりすぎる、音楽が大げさすぎる、いろんな音楽に手を出しすぎる、挿入歌が余計、話が複雑、だれが人形でだれが生…

『イワンの仔馬』(イワン・イワノフ=ワノー/1947/ソ連/57分)

すばらしい。天翔る超自然な馬たちのたくましい勇姿、躍動感あふれる動き、つじつまの合わないところが多々あるが、なに、民族の宝、フォークロア、最後はめでたしめでたしで、気分よく終わる。

『ザグレブフィルム レトロスペクティヴB』(クロアティア/76分)

これは楽しい。バラエティに富んでいる。「ベチャーラッツ」の民族的な色彩と踊りは愉快。「ケロケロ」の、主人公とカエルが自由の身になって世界じゅうを駆けめぐり雑誌だ酒だ女性だと楽しみまくるさまは実ににぎやかしくて胸躍る。「サティ・マニア」は、…

『死者の書』(川本喜八郎/2005/日本/70分)

岩波ホールで上映されていたのを見逃していたんで見た。正直言って、こんなものか? という印象。動きがないのはしょうがないにしても、人形で作る意味がわからない。画面が明るすぎて、なにもかもがクリアに見えてしまい、感興を削がれる。

ラピュタのアニメ

「第7回ラピュタ アニメーション フェスティバル 2006」は5回券を買って結局4回見ただけに終わった(1枚は譲った)。聞いたことのないアニメーション作家、どんなアニメが作られているか未知の国のアニメーション、名の見知っていてこれまで見たことのなか…

『シュヴァンクマイエルのキメラ的世界』(ベルトラン・シュミット/2001/フランス/58分)

シュヴァンクマイエルとその妻の肉声が聞けるドキュメンタリー作品。若々しくヴァイタリティあふれる姿が印象的。制作が日常。日常が制作。ただ、この作品そのものは表層をなぞっただけの感じも。シュヴァンクマイエルの内からの声が聞こえてこない。たとえ…

シュヴァンクマイエルのキメラ的世界

新作『ルナシー』と続けて見ようとしたが、仕事が長引いて断念。イメージフォーラム。

セルゲイ・パラジャーノフ「ざくろの色」(アルメニア/1971年/1時間13分)

吉祥寺バウス・シアターにて。十数年ぶりに観た。二度目。三百人劇場で先に観た「火の馬」が、かつての記憶と違って色あせて見えたので心配したが杞憂だった。この作品の魅力は今なお健在。もちろん何度かコクリコクリしたけれど。印象的なシーンはほとんど…

星野道夫『森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて』(世界文化社)

星野道夫の遺稿を加えた事実上の遺作?の改訂再版。写真が豊富でうれしい。いずれも一度二度は読んだことのあるような文章ばかりだが、星野道夫の文章は歌だ。耳に馴染みのあるメロディーが流れ、特有の風景を醸しだし、少なくともそれを読んでいる間は持続…

板垣真理子『武器なき祈り』(三五館)

昨年初頭に購入した本を読了。すぐに読まなかったのはやはり冒頭、筆者である板垣真理子氏の夢に登場したフェラ・クティにとまどったからだ。筆者には、フェラ・クティと真っ先に接触し、だれよりもフェラのことを理解しているという自負があったのだろう。…

フィリップ・ゴーレイヴィチ(柳下毅一郎訳)『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実』上下(WAVE出版)

映画『ホテル・ルワンダ』の記憶も新しい、ルワンダ大虐殺についてのルポルタージュ。隣りあって暮らしていた隣人、職場の同僚、学校の先生、かかりつけの医者、いつも買物をしている商店の主人、町長、牧師が、集団で殺人者になってしまうという衝撃的な事…

フォン・フランツ『永遠の少年』(筑摩書房)

とびとびで読んでやっと読了。それにしても手厳しい本だ。いちいち耳に痛いことばかり。「ごもっとも」「その通り」「ごめんなさい」と納得しつつ、永遠の少年性に由来するあらゆることが否定されているような気にもさせられる(もちろん、そんなことは言っ…

朱川湊人『白い部屋で月の歌を」(角川ホラー文庫)

二編収録されているうち、最初の「白い部屋で月の歌を」は第十回日本ホラー大賞短編賞受賞作。ていねいな書きぶり。最大の難点は人形がこのような端正な文体を駆使している必然性がまるでないことだ。ネタが割れてしまえば、えらく不自然。次の「鉄柱」もけ…

読書

ここ一週間ばかりに読んだ本。

『オフサイド』(イラン/2006/88分/監督:ジャファル・パナヒ)

最高! 全サッカーファン必見! サポーターに男も女もない。とは言え、差別されたイラン女性のたくましさ、活力、迫力、工夫になまじの男性はかなわないだろう。彼女たちの突進力はワールドクラス! 男性に化け、顔に派手なペイントし、時には軍服まで着込ん…

『スクリーム・オブ・アント』(イラン/2006/90分/監督:モフセン・マフマルバフ)

イラン人夫婦によるインド見聞記、という題材にまず面食らう。次に面食らったのは、映画の視点だ。まるで欧米人の視点みたいに、インドを不思議の国として捉えている。日本人の目からはごく近くに見えるイランにして、インドはかくのごとく不可解な国なのか…

『半月」(イラン/2006/114分/監督:バフマン・ゴバディ)

クルド人モチーフの四作目。闘鶏師? マコの景気のいい掛け声とともに快調に、クルド人音楽家たちの旅は続くかに見えたが、次々と不都合が発生し、シュールな展開が連続してのち、最後はなし崩しに破局に至る。いささかペシミスティックな気がしないでもない…

FILMeX2006

今日はそれぞれ楽しめた三本。

「オペラジャワ」(インドネシア/2006/120分/監督:ガリン・ヌグロホ)

歌と踊りのみによって象徴的に語られるストーリー。おおまかなところでは、妻の浮気を疑った夫が、権力者に対する反乱にかこつけて、その疑惑の人物を殺し、妻まで殺してしまう、という話? インドネシア(ジャワ)の豊かな芸能風土が存分に感じられる作品に…

「メン・アット・ワーク」(イラン/2006/75分/監督:マニ・ハギギ)

スキーに出かける途中の中年男四人が、断崖の手前に突っ立っている岩を見つけて、それをなんとか下に突き落とそうと悪戦苦闘、妻や元妻、通りすがりの人たちも加わって、ジタバタする話。キアロスタミが原案、というのが冒頭と最後の部分だけということが、…

「ハンモック」(パラグアイ/2006/78分/監督:バス・エンシナ)

登場人物は老夫婦の二人のみ。声もほかに場面によって息子、医者、兵士の三人が加わるだけで、原則的に二人の会話。あとは犬の吠え声か。固定カメラ。林の中のハンモック。畑。診療所。ときどき空のショットがさしはさまれるだけ。戦争に行った息子を待つ老…

FILMeX2006

今年のFILMeXは会社を有休とって今日と明日との二日。

近所の狭い丁字路で

近所の狭い丁字路で白い車が左折するのに苦労していた。自転車や通行人が周囲の壁に張りついて様子を見守っている。この道には慣れていないのか。ナンバープレートの文字が「上海」と読めた。だからなのか、と瞬時に納得しそうになるが、「上海」のわけがな…

新文芸座

ホテル・ルワンダ ルワンダの大虐殺については、以前「東京アフリカ映画祭」で「ルワンダ虐殺の100日」を見たことがあるが、その映画は「ホテル・ルワンダ」以上に背景の説明がなく、酸鼻な光景が繰り広げられる割に奇妙に静的な印象を与える映画だった。フ…

飯田橋ギンレイ

クラッシュ なんの予備知識もなく軽い気持ちで見始めたが人種問題を重層的に扱った見応えのある映画。ムーディーな部分が目立つが、人種問題に論理的な解決策を提出しようとはしていないので、このような演出でなかったらかなり後味が悪かったろうという気が…