「オペラジャワ」(インドネシア/2006/120分/監督:ガリン・ヌグロホ)

歌と踊りのみによって象徴的に語られるストーリー。おおまかなところでは、妻の浮気を疑った夫が、権力者に対する反乱にかこつけて、その疑惑の人物を殺し、妻まで殺してしまう、という話? インドネシア(ジャワ)の豊かな芸能風土が存分に感じられる作品になっていて、それを見るだけでも飽きさせない。インドネシアは本当に音楽が豊饒だなあ。踊りも大胆で繊細でヘンテコだ。すばらしい。妻シティ(「土」の意味)をろくろに座らせて粘土を塗りたくる変態でエロティックなシーン、シティを追いかける影が壁と床の境目で奇妙なシルエットを作りだすシーンをはじめ、ふとっちょの歌手の歌で敵役のダンサーがかっこつけて踊るシーン、誇張された動きの反乱のシーン等、見どころは非常に多い。ただ映画作品として完成度には疑問が残る。パラジャーノフの諸作品のように、スタイリッシュにまとめられていないのだ。なにもかも詰めこみすぎているのだろうか。パラジャーノフの豊饒さは実は素材の厳密な取捨選択によって成り立っているという禁欲さの現れなのだろうか。