新文芸座

ホテル・ルワンダ

ルワンダの大虐殺については、以前「東京アフリカ映画祭」で「ルワンダ虐殺の100日」を見たことがあるが、その映画は「ホテル・ルワンダ」以上に背景の説明がなく、酸鼻な光景が繰り広げられる割に奇妙に静的な印象を与える映画だった。フツ族の暴徒に追いつめられたツチ族の老若男女が、たいしてジタバタすることもなく、運命を甘んじて受け入れるような諦念のムードを漂わせていたのが印象に残っている。「ホテル・ルワンダ」は支配人ポールの格闘の物語だ。そのプライベートな視点を通じて虐殺の恐怖がひしひしと迫ってくる。最後まで気を抜けなかった。

ミュンヘン

ユダヤ人のスピルバーグが身内の「悪」をさらけ出すような映画を作った勇気は素直にたたえてもいいのではないか。主人公をはじめキャラクター描写がやや弱い。チームのメンバーの輪郭がもっと明瞭であってほしかったし、主人公であるリーダーはいかにも頼りなくてミスキャストでは? 感情移入させる工夫は凝らしているのに十分に成功していない。ほかの人が撮ったらもっと印象深かったのではないかと。惜しい。それにしてもスピルバーグは器用だな。