近所の狭い丁字路で

近所の狭い丁字路で白い車が左折するのに苦労していた。自転車や通行人が周囲の壁に張りついて様子を見守っている。この道には慣れていないのか。ナンバープレートの文字が「上海」と読めた。だからなのか、と瞬時に納得しそうになるが、「上海」のわけがない。それは「土浦」だった。三本の直線の組み合わせによる単純な文字と、海偏に込みいった旁の複雑な文字。ほんの一瞬の読み間違いで、それはすぐに正されたので、上海はそんなに強く印象づけられなかった。けれど、あたりがもっと暗ければ、車がもっと速く動いて視界から消えていれば、それがもっと長く続く気がかりになっていたこともあり得る。