竹本泉吾妻ひでお

ラファティを思わせるというSF方面からの噂を聞いて、竹本泉のマンガをいくつか読んでみた。最初に読んだ『ねこめ〜わく』『よみきりもの』がなかなか楽しく、とくに『よみきりもの』のなかには本当に声を出して大笑いした絶品があったので、もっと読んでみる気になった。『はたらきもの』『せ〜ふくもの』『トゥインクルスターのんのんじー』『かわいいや』『ある日のツヴァイ』『あんみつ姫』『アップルパラダイス』『世の中なまほう』『ちまりまわるつ』『あおいちゃんパニック!』『さよりなパラレル』ふ〜。一言で言えば「ぬるい」。ラブコメとしてもSFとしてもただの変な話としても。『アップルパラダイス』が一番変な話が多いが、アイディアを消化し切れていない中途半端な話ばっかり。一見魅力的な設定の『さよりなパラレル』にしてもしかり。そして主人公は成長しないし、世の中は変化しないし、なにもかもがぬるま湯の中にいる。最初の数冊を読んだときは、「ソフトな吾妻ひでお」「ラブコメ仕様の吾妻ひでお」「エログロナンセンスなき吾妻ひでお」「失踪しない吾妻ひでお」といった印象もあったが、本日久しぶりに吾妻ひでお作品を読んだら、その印象は吹っ飛んだ。なんという発想力、めくるめく展開、底なしの狂気、徹底ぶり、充実感、毒気! これが吾妻ひでおだ。ほかのだれとも比べられない。読んだ作品が『幕の内デスマッチ』、天才だった八十年代前半の脂ののりきった時期の作品というのもあるだろうが、それにしてもスゴイ。エロの方面に特異化された作品集だが、おそらく近年のオタク市場を席巻しているおびただしい作品群は(たぶん)逆立ちしてもかなわないだろう。感服いたしました。吾妻ひでお、天才!
(とは言え、竹本泉、まとめて一気に読みすぎたかも知れない。ちょっと時間をおいて読み返してみよう)