岡田尊司「脳内汚染からの脱出」(文春新書)

「ゲーム、ネット依存」が薬物依存に等しい危険性を有しているということを脳内現象に即して説明し、自身のものを含む臨床結果と豊富な統計によって裏づけるというのが前半の展開。あまりにもスッキリしているのが逆に腑に落ちないところだ。統計が恣意的に利用されて、内容が深く吟味されていない印象がある。著者は理解しているのかも知れないが、説明に反映されていないというか。「子どもの頃、テレビに長時間触れることが、犯罪行為を助長する要因となることを直接実証した最初の研究」を紹介したあたりでも、その因果関係はわかるものの、実際にどういうプロセスが起こっているかはわからない。個人的には「ゲームはやらないほうがいい」という気持ちを固めてくれたのはありがたい。ある種のゲームはやり始めたら止まらなくなり、なのに、かけた時間の割りに満足感が得られないからだ。「やるだけ無駄」という以上に、時間を無駄にしたという罪悪感、焦燥感を招き、まるで気分転換にならない。うまくゲームとつきあえる人も世の中にはたくさんいるのだろうが、わたし個人に関してはゲームはパス、ということだ。この本の内容を全面的に承諾したわけでも、しっかり吟味できたわけでもないのだけれど。