鷲津名都江『ようこそ「マザーグース」の世界へ」(NHKライブラリー)

「わらべうた」の一種としての「マザーグース」を少しでも知ろうと思って読みはじめた。「子ども部屋の押韻詩」を意味する「ナーサリー・ライム」というのが通称のようで、だったらその表現で統一してもらいたいものだ。日本ではアメリカ経由の「マザーグース」で親しまれているかも知れないが、本書の大半で扱っているのは本国イングランドの「ナーサリー・ライム」だからだ。「マザーグース」が子どものためのみならず、広く社会生活に浸透しているのはわかるが、それで日本の「わらべうた」よりも広汎な世界を扱っているという評価はどうなんだろう(「わらべうた」を蔑んでいるようなニュアンスが感じられるのだが)。中・上流家庭の子ども部屋から発生した「ナーサリー・ライム」がそのような雑多な「入れもの」(押韻詩、言葉遊び、ナンセンス、歌)として発達したのだから、道端で子どもたちの間で広がった日本のわらべうたとは守備範囲が違うのは当然のことだ。まあ。「ナーサリー・ライム」も「わらべうた」も、楽譜に書かれ、「正しいもの」が認定され、学ばれるものになった時点でなかば死んでいるということでは同じではある。