「あなたなら言える秘密のこと」(2005/スペイン/イサベル・コイシュ監督)

タイトルを見て、心になにかしらの傷を抱えた男女が紆余曲折するラブストーリーだろうなと思って、普通ならまず観ない映画だが、冒頭の単純な毎日を繰り返す心を閉ざした女性の描写を見て一気に引きつけられた。主人公のハンナが休暇でどこかの物寂しい町に出かけ、なにか衝動的に看護の仕事を請け合って、海上に浮かぶ油田採掘所にむかうにあたって、この映画はいったいどこへむかおうとしているのか? と、一向にハンナの「秘密」が明かされないこともあって、スリリングきわまりない展開。最終的にはなんとも重すぎる現実、劇映画の枠をすら食い破りかねないほど痛切な現実を突きつけられるが、うまく着地できて一安心。一人でいさせてあげたほうがいい、という、ハンナを担当したカウンセラーの言葉も正しいなら、それを無視してハンナと会ってプロポーズしたジョゼフも正しい。