バーネット『秘密の花園』(光文社古典新訳文庫)

名前だけは知っていた児童文学の名作だが初めて呼んだ。かわいげのない子どもと言い、苛酷だったり冷淡だったりする環境と言い、謎めいた展開を交えて読ませる読ませる。動物と話せ、植物のことならなんでも知っているディコン少年の存在は作者の願望が勝ってリアリティが薄い。固く心を閉ざしていた少女と少年が次第に打ち解け、生きる喜びに目覚めていくくだりは感動的だ。ただ、終盤は予定調和的な観が強く、間延びを感じさせることもあって失速気味。