マフマルバフ姉妹

銀座テアトルシネマ。9:20のモーニングショーで妹ハナ・マフマルバフの『ハナのアフガンノート』、11:15から姉サミラ・マフマルバフの『午後の五時』
ハナ・マフマルバフ『ハナのアフガンノート』。最高におもしろいドキュメンタリー。姉が『午後の五時』を撮る際のアフガニスタンにおけるキャスティングという題材自体がおもしろいということもあるが、姉が「撮るな」と言っても、知らんぷりして平然とカメラを回し続けたのはハナだ。映画に出るくれるようサミラがアフガン女性アゲレを説得しているさまを映す一方、そのさまを心配げに、いぶかしげに見つめるアゲレの母親の姿も抜け目なくとらえている。アイラインも毒々しい、けばい化粧のサミラは、身振りも激しく、非常にエキセントリックに映る。このドキュメンタリーのタイトルが最初「私の気違いお姉さん」だったのもうなずけるというものだ。父親のモフセンを交えて、この父娘はほとんど詐欺師に見える。映画に出したい素人に対して、いいことしか言わない。きみのためになるだの、こんなチャンスは二度とないだの。こんな二人が目の前にいたら、まず信用しないだろう。とは言え、映画といえば、インド風の歌って踊るものしか知らず、映画なんかに出れば聖職者としての名声に傷がつくだの、映画に出演する赤ん坊は殺されて埋められてしまうとか考えてしまう人たちだ。いいことを並べるしかないのだ。
サミラ・マフマルバフ『午後の五時』。求心力に欠け、ややとっ散らかった印象。ロルカの詩の「午後の五時」が死の不吉なイメージをかき立てるが、そのイメージで全編が統一されているわけではない。主演の女性が果たして適役だったかどうか疑問が残る。監督と同じ22歳だというが、もう少し年を食っているように見える。アフガニスタンの大統領になりたいというが、その思いがストレートに伝わってこない。その意味だったら街頭で爆死したミナという女性の方がふさわしかった。ただ含羞を含んだ表情が魅力的ではあるが。その彼女を応援する詩人の男性は、これまでのイラン映画ではちょっと見たことのないタイプの優男だ。もっと絡みがあればよかったのに。