イオセリアーニ2

渋谷シネ・アミューズ
11:15〜『月曜日に乾杯!』。イオセリアーニの映画の顕著な特徴が「群集劇」であることにようやく気づいた。よくまとまって、テーマもわかりやすいという意味で、イオセリアーニから一本というときはやはりこれになるか。退屈な日常を脱して旅立つが、結局元の日常に戻るという映画は、ほかにも数多ありそうだが、今思い浮かべることができるのはアキ・カウリスマキの『愛しのタチアナ』だ。カウリスマキ作品の方が、より主題がダイレクトに伝わってくるし、とぼけ具合も堂に入っている。よりストレートに笑える部分が多いのもカウリスマキのほうだ。とは言え、主題だけが映画ではないので。
14:40〜『素敵な歌と舟はゆく』。続けて観るとエピソードが混乱してくるかな? ラストは爽快だが、理解しがたいエピソードも多い。長男のニコラは果たして何? ある意味主人公とも言えるような出方をしているが、その行動には首尾一貫性が欠けている。豪邸に住み、たくさんの召使いにかしずかれ、小遣いにも不自由していないだろうに、バイトに精を出し、ナンパを企み、浮浪者や不良少年と付き合い、ついには強盗を犯して留置場にぶちこまれるが、出所してもだれからもとがめられるでもない。同時に出所した友人を置き去りにするなど、どうも好感を持てるような描き方をしていない。この俳優、イオセリアーニの孫だというが。勝手に振る舞う両親や長男の間で、退屈を持て余している妹たちがさして用をなしていないのも気になった。
イオセリアーニ映画の登場人物たちは暢気で余裕をかましているが、それはなにか没落貴族のメンタリティを感じさせる。あるいは落伍者の。歌いながら舟で旅だった二人は、金がないなら野垂れ死に間違いなしだろうが、その野垂れ死にのリアリティーを回避しているように見える。
16:55〜『四月』。処女長編だけあって初々しい。セリフなしで音だけで構成するというセンスがいい。