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マルズィエ・メシュキニ『STRAY DOGS』。いい。子供が出てきて、アフガニスタンが舞台で、そろそろ「またか」といった観がなくもないが、秀作。主役である兄妹のうち、妹の強情な表情が異様に印象に残っている。強い。こんな表情があるかぎり、希望というのは失われることはないのだ。この映画はユーモアがあるのがいい。刑務所に入れてもらおうといろいろ盗みを働くがそれでもうまくいかない兄妹は、盗みを失敗した映画が上映されていると聞き、映画館に行くが、切符売りの兄ちゃんに「アート系で退屈な映画」だとして難色を示された映画が、なんとイタリアン・レアリスモの名作『自転車泥棒』! 義理の娘であるサミラが未完の大器的な魅力を振りまきながら、やや難解な印象を残すのに対して、こちらは大人の余裕というべきか。

アモス・ギタイ『プロミスト・ランド』。ピンと来ませんでした。身の毛もよだつ人身売買ネットワークのことを描いているが、「それで?」といった無責任な印象しか残らないのはなぜか? カメラはドキュメンタリー・タッチを意識しているが、NHK的なドキュメンタリーのほうがよっぽど問題意識を感じさせたかもしれない。

ガイ・マディン『世界で一番悲しい音楽』。この監督の映画はこれまで見たことがなかったが、いやあ楽しい。アート系ギャグ? バカバカしくて美しくて物悲しくて狂躁的。ただ、少々間延びした印象があるのは、カズオ・イシグロのシナリオに問題がある? デイヴィッド・リンチ的、というにしては、狂気が足りないか。にしても、ほかの映画は見てみたい。