千年女優

今敏千年女優』。レンタルDVDで観た。よくできている。最大の欠陥は二箇所。主人公が愛しの君を追いかけるモチベーションがあまりにも希薄であること。物語を進めていた鍵である「鍵」が結局なんの役割も果たさない、おとりみたいなものだったこと。その他にも欠陥は盛りだくさん。前半に頻出する大阪弁のツッコミがいささか煩わしいこと。地震と関係が深いと語る主人公だが、それは物語の原理的なところ、主人公の内面的なところと一切関係しないで、ただシナリオ制作上の都合にしかすぎないこと(引退間際の引き金、死のきっかけ)。見渡すかぎりの雪原で絵を描きたいという愛しの君の望みを主人公がたいして理解していないこと(理解していたら、雪原にずっとたたずんでいるシーンが必要とされたはずだ)。ラストに「あなたを追いかけているわたしが好きなの」と告白させることで、主人公のひたむきさよりも、わがままさが強調されたかに見えるが、実はそれはわがままさえでもない、ただ「言わされている」セリフに聞こえること。
シナリオ先行型の作品で、登場人物達はみんな、シナリオの奴隷にしかすぎない。とは言え、これが実写だったら、もちろん演じる女優の力量、魅力にもよるのだが、その力によって作品を少しは観れるものになっただろう。