ゲンダーヌ

田中了+D.ゲンダーヌ『ゲンダーヌ ある北方少数民族のドラマ』(徳間書店)。苦難に満ちた、著者ゲンダーヌ氏の半生だが、あまり苦渋を感じさせないのは著者のおおらかな人柄のせいもあるだろうか(執筆はほとんど田中了氏であるらしいが)。少年時代の思い出として、意外にウィルタの伝統、民俗を感じさせるものが少ない。著者ゲンダーヌ氏にとって、それはあまりにも自明のものだからか? 日本人との関わりの中ですでに伝統社会がだいぶ日本化されていたからか? カラフトの「少数民族」が戦争に翻弄されるさまを描いて、その勝手さ、理不尽さには怒りを禁じえないが、ウィルタのなんたるかを具体性をもって感じさせないので感情移入をしにくいのが残念なところだ。