これはどこの世界の音楽?

危急を告げる掛け声と、重々しくドラマチックなピアノ・ソロ、単純なフレーズで煽り立てるホーンズに導かれて、振り絞るような男性ヴォーカルが続く。なにを歌っているかはわからないが、その内容はどうでもいいのかもしれない。その熱量、圧力、振幅、深淵、異物感を肌身で感じるべきなのだ。エキセントリックで、強烈で、毒々しくて、クセになる。巷にあふれている音楽、J-WAVE、テレビ、有線放送、カラオケで流れている音楽をすべて、「巷にあふれている音楽」と吐き捨てて、まとめてドブに投げ捨ててしまいたい衝動に駆られる。この音楽を好きだという人をぼくは愛するが、あまり友達づきあいはしたくないかもしれない。このAddis Ababa Beteという曲が最高にインパクトがあるにしても、これはまだCDの一曲目に過ぎない。英国WORLD MUSIC NETWORKレーベルによる、ROUGH GUIDEシリーズのエチオピア編、THE ROUGH GUIDE TO THE MUSIC OF ETHIOPIAは、エチオピアのポップスの充実した入門盤で、最後の最後まで意外性と発見、戦慄、そして喜びに満ちている。すでに国内盤(byオルター・ポップ)が発売されているエチオピーク・シリーズを愛聴している人には、重複が目立つだろうけど。