『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(ジャン・ジャック・アノー監督/ブラッド・ピット主演)

手慣れた手つきで進んで飽きさせない。チベットの風物は見た目を楽しませるが、歴史のうねりと人の交わりが厚みを持って迫って来ない観がある。ストーリーは良くできていると思い、たまたま図書館で見つけた原作本を読みはじめたら、かなり違う。最初は、ハラーが“Seven Years in Tibet"に書いていないものを取り入れたのかと思った。ほかに、もっと詳細な別著があるとか、腐れ縁とも言えるペーター・アウフシュタイナーがハラーの書かなかった部分に言及した著作があるとか、同時代者や友人の証言があるとか。しかし、ネットでちょっとあちこち見た限りでは、ハラーの傍若無人な性格とか、アウフシュタイナーとの反目と和解とか、チベット人の女性仕立屋を巡る恋の鞘当てとかはすべて映画向けの創作らしい。ハラーの許可は得ているんだろうか?