アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』(ハヤカワ文庫SF)

ジョウント効果に基づいた世界を見事に作りあげているとは言えるが、ジョウント効果をメインテーマとした作品ではないのが不満か。ストーリーが性急すぎ、場面場面が十分に咀嚼し切れていない観がある。主人公ガリー・フォイルの復讐心、執着、怒りもうまく伝わってこない。石森章太郎がパクった「加速装置」が途中から大活躍だが、唐突な登場と使い方がいささかご都合主義的。難民を宇宙に放り出す命令を出したオリヴィアの動機も説明がないのでもどかしい。昔読んだとき、世評の高さに対して「あれ?」と思った記憶があるが、今回も同様。華麗さがやや空回りしている気がする。ストーリーも直線的。
(『コンピュータ・コネクション』(サンリオSF文庫)はどこにあるのかわからないので再読できなかった。)