アレクサンドル・ソクーロフ『穏やかな生活』(2001)

ソクーロフの作品中でも最も地味な一作かも。奈良県明日香村の、築百三十年の「優しく堅固な」日本家屋に一人住む、旧家の老女を描いたドキュメンタリー、というより映像によるエッセイか。それによって生計を立てているという和裁の作業をするところ、家を訪ねてきた托鉢僧と応対するところ、食事をするところ、自作の歌を詠むところを淡々と映す。森や雲、夜空、月、鯉の幻想的な映像や、ソクーロフらしい映像のオーバーラップ(和室と雲とか)が魅せる。エレジー」シリーズではないが、これも一つの哀歌の形なのだろう。