萩尾望都『ポーの一族』『スター・レッド』『銀の三角』『トーマの心臓』

実家に萩尾望都の旧作があったので暇にあかせて読み返した。『ポーの一族』はエドガーとメリーベルの話は最高にすばらしいし、エドガーとアランの話もエピソードとしてはおもしろい。ただ、それ以降は絵柄が変わったことがあったり、設定に無理が生じていることもあって、作品として苦しくなってくる。続きがありそうな含みを持たせている箇所もあるが、これではやはり続けられなかったろう。『スター・レッド』は文句なしにおもしろい。シャープさを増した絵柄とスピード感、謎が謎を呼びスケールが拡大していくストーリー。傑作。複雑きわまりない『銀の三角』は結局のところ良くわからない話だ。風物、人物造形、ファッションは中央アジア風にシフトして、作品世界になじんでいる。感情移入できるキャラクターがいないというのが、今ひとつ入りこめない理由か? 『トーマの心臓』はさすがに今となっては気恥ずかしかった。作品の評価という以前に、日本人女性の目によって潤色された白人男子間の関係性がもう受けつけなくなっている。