アレクサンドル・ソクーロフ『ロストロボーヴィチ 人生の祭典』(ロシア)[シアター・イメージ・フォーラム]

ロストロボーヴィチのことはそれほど詳しくは知っていなかったつもりだが、このドキュメンタリーを見たあとの印象はこれまでとまったく変わっていない。開けっぴろげで誠実でお茶目で、誠に愛すべき人物。妻であるガリーナ・ヴィシネフスカヤのことは逆にほとんど知らなかったので、この作品でその強烈な人柄、音楽にかける情熱、歌手として活躍していた頃の存在感、親に愛されない不幸な少女時代の境遇に打たれた。それにしてもソクーロフはよくも、赤ん坊の頃に死んだ息子のことなど尋ねられるものだ。ヴィシネフスカヤが特に気を悪くすることもなく、当時のことを語りだしたからにはそれだけの信頼関係がすでに築かれていたということか。そのような率直な告白を引き出せる特別の能力をソクーロフが持っているということか。まあ、ソクーロフの語りを聞いているだけで結構満足できるから不思議だよな。