若松湯

これまでに利用した銭湯の中で、現在使っている若松湯がなにげに一番好感が持てる。由緒正しいとかたたずまいが独特だとか屋根が瓦葺きとか店主が手品をたしなむとか、そんな目覚ましい特色があるわけではなく、脱衣所は大概の銭湯がそうであるようにいくつものロッカーでキーが紛失しており、汚れ一つないほどきれいなわけでもないが、ほどほどに手入れが行き届いており、時間帯により四人が変わるフロントの応対も心地よい。一つだけ変わっているものと言えば、いわゆる「ペンキ絵」かもしれない。こんなものは見たことがない。どこかほかの銭湯にあるのかどうかもわからない。波頭押し寄せる海を背景に、なんと三匹(三人?)の河童が描かれているのだ。一見して異様だと感じるのは河童はその名前からして、川に生息する生き物だからだ。じめじめ湿っぽくて泥臭い、どちらかと言えば陰気な印象があり、海の塩辛さ、解放感とはなじまない。もちろん、この「ペンキ絵」では河童はかわいく描かれており、それぞれがイルカ、ウミガメ、トビウオの上に乗って、晴れやかな表情を見せている。しかも、ウミガメに乗っている一人が長い髪を手ですいていることからもわかるとおり、三人ともが女性というか、あからさまに幼児体型なので幼女、少女なのだ。ロリータ河童だ。なんでまた?