石川浩司『「たま」という船に乗っていた』(ぴあ)

図書館の開架棚にあって文字組がゆったりとして割とすぐに読めそうだったので椅子に腰かけて読みはじめたら面白くて面白くて一時間半で読了した。石川浩司はやっぱりパフォーマンスだけでなく一人物としてすばらしい。汗を掻くから初めからランニング。髪をセットするのが面倒だがスキンヘッドにしてなんらかの自己主張していると思われるのがイヤだから丸刈り。音楽をやって食っていければそれでいいから無理はしないし、売れることにもこだわらない(これは他のメンバーも同様だったらしいが)。明快だ。男の理想だ。ただ、この本で残念だったのは、メンバー個々のキャラクターを物語るようなエピソードの類が乏しいことと、「たま」の音楽性がさして掘りさげられていないことだ。それぞれが好きな音楽、影響を受けたミュージシャン、筆者が使う楽器の由来などは書かれているが、それがどうしてあんな独特な音楽となって結実するかがよくわからない。シュールでチープ、懐かしくかつ不穏きわまりなく、まさに日本オリジナルと言える希な音楽。一通り聞き返してみるか。パスカルズやソロのライブも観たい。この本も手にいれよう(一冊手元に置いておきたい)。
と思ったら絶版か。