杉井ギサブロー「あらしのよるに」(2005)

狼と山羊の友情という非常に無理のある設定を透明感のある絵柄できれいに描いた作品。たがいの秘密を聞き出せと命じられたメイとガプが会う場面は緊迫感があり、その後川に飛びこむ場面も希望を感じさせた。だが、残りの場面は明らかに蛇足だ。狼と山羊が仲良く暮らせる場所などあるはずがない、というか、この絵柄、このリアリズムを基調とした描写の仕方では「あるはずがない」と感じさせる。フォークロア的な、寓話的な描き方をすれば「ああ、こんなこともありうるかも」と思わせることも可能だろうが、これでは無理。原作はどうなんだろう?